2007年01月04日

アウトサイダーワーク

Эアウトサイダーワーク
 img091.jpgコリン・ウィルソンは語る、精神的な飢餓と渇きは、ユングのいう超越への渇望。 ユングは、自分の患者で中年を過ぎ、ひどい心理障害をかかえている人は、その問題が基本的 に宗教であると。ユングは、信念の問題、 目的意識の問題、人生の意義の問題を言っていた。
 知的に優れた人間というものは、知性派でない人たちよりいっそうの超越を必要とする。インテリであればあるほど、知性が懐疑を呼び その懐疑から解放してくれる絶対的な信念とでもいうものが欲しくなる傾向にある。
 ハイデッガーがいったところの、日常性の凡庸さ(triviality of everydayness) から逃れたいという渇望、 それこそがすべてなのだ。ヴァン・ゴッホが経験したあの瞬間、天地万物すべてが無条件に素晴らしい ものに感じられるあの体験。
 『宗教と犯行人』(邦題:アウトサイダーU)では、宗教的不適応者とその幻影に ついて、さらに最近の「Slouching towards Bethlehem」では、奇妙な夢想を抱く人、あるいは奇妙な 瞬間を持つ人、つまり森羅万象がまったき善であるという感覚をもつ人について語っている。
 人間は、基本的には動物の中 で唯一、まだ進化する余地のある生き物である、というのは事実。たいていの動物は、現状に満足して留まっているが、 人類は唯一、足踏みしてその場に留まっていることに我慢ならない性癖をもっている。根本の ところで何とかして平凡な日常を超えたい、意識の違った段階に進みたいと願っている。人類は進化の次の相へ到達す る段階に来ていると私は信じてる。それが、私がものを書き始めて以来の信念だ。つまり、人間が精神に対する新たな支 配力を手に入れる、現在よりはるかに容易により高い意識レベルに達する能力を得られると。
 つまりマズローがいうところ の至高体験、これは必ずしも神秘的な心象とは限らず、万物は素晴らしいとありありと感じられる陶然たる幸福感を味わう 体験。
 それ はあたかも不意に明かりが点いて、宇宙が美と驚異に満ち満ちていることを目の当たりにしたかのような至高体験だ。明かりが灯されたのだとしても、そこに見るのは、明かりを点ける以前からそこにあった物だということだ。
 万物は文句なく素晴らしいという感覚は、考えてみるとそれは自明のことで、常にそう見えていてもおかしくないのに、そ れでも気付かないということは、ウィリアム・ジェイムズのいう人類における盲目であり、人類に限って言えば、その当たりに秘密が潜んでいるのではないかと思われる。
 われわれの視野を狭めている独特の偏屈さから逃れ、意志のままにより視野 の広い状態に移行していくための鍵はそこにあるかもしれない。そしてわれわれは想像力を駆使してそれを行うべき、想 像力とはファンタジーや非現実を喚び出す魔力ではなく、それは、現実 に根差した未来観という意味での想像力だ。これはフランスの心理学者ピエール・ジャネのいう現実機能だが、われわれは この現実機能を発達させることが必要だ。
 たとえば 人は心の底から尻込みしたくなるような状況に置かれると、ああ神 様、なんて恐ろしいと感じ、脅威が去るとどっと安心する。ただ、自分を今の恐ろしい境遇に置いてみさえすれば、それ以外 の状況はすべからくよいものに思われる。だが、そこが人間の困ったところで、恐ろしい危機とか難関とか悲惨な状態を想 像して今をありがたい状況だと実感するような現実機能を人は持ち合わせていないのだ。
 私自身は、人間はそれにかなり近い段階ま できていると信じてはいるが、過渡期にある人間が、やはりより先鋭な意識を持ちたいと渇望するのは無理のないことなの だ。この渇望こそ、 われわれが進化の次相へ飛躍する兆し。この200年ばかりの間に、渇望がより深まった印であると思える。
  W・H・オーデンがかつて言ったように、これこそ人間存在 の真の問題であって、エドムント・フッサールは、これを共同生活世界と呼んだ。あなたの生活世界は、基本的にはあなたの視点での経験 に基づくものであり、ディケンズの生活世界はまたまったく異なっていたし、オルダス・ハクスリーの生活世界など、まったく 裏側の視点から見ているように見えた。しかし共同の生活世界というのもまたあるのである。

 われわれの生活世界はどんどん共同する部分が多くなって いる。われわれの周囲には共同生活世界が氾濫していて、いわばみんな同じスープの中にいて、同じ空気を吸っているの だ。アウトサイダーたちはこの共同の生活世界を拒んだ。より高い緊張を生活に求めていたからだ。それを求めることこそ、 最も優れた人間として必要だと言える。

 日本では私の本が非常に よく読まれているのだが、それは日本人が、特に信心深い国民ではないにせよ、意義を、意味のある人生を求めてやまな い人たちだから、ということもあると思う。そして、自分が今やっていることに全人生を、魂のすべてを注がねばならないとい う労働観、信念が国民性としてある中で、大企業などに全人生を捧げたくないと考える人はあらゆる物から疎外されている と感じるようになって、強烈に意味や目的を求める。

 何か違ったものを求める渇望感−超越の欲望。今現在は、その 渇望がかつてなく高まっているといえるだろう。われわれのこれからは、人間精神の変化、進化の次なる相への飛躍だ。
(この記事内容は、月刊プレイボーイ1995年9月号の記事を編集・引用)

Ф新実存主義の道

Фアウトサーダー的世界
至高体験―自己実現のための心理学至高体験―自己実現のための心理学コリン ウィルソン Colin Wilson 由良 君美

河出書房新社  1998-11
売り上げランキング : 82342

おすすめ平均  star
star恐るべき重要な書
star至高の心理学書
starウイルソン氏のお茶濁し

Amazonで詳しく見る
by G-Tools賢者の石賢者の石コリン・ウィルソン 中村 保男

東京創元社  1971-06
売り上げランキング : 108642

おすすめ平均  star
star孤高の一冊
star天国へ行く方法

Amazonで詳しく見る
by G-Toolsコリン・ウィルソンのすべて〈上〉―自伝コリン・ウィルソンのすべて〈上〉―自伝コリン ウィルソン Colin Wilson 中村 保男

河出書房新社  2005-09
売り上げランキング : 111480

おすすめ平均  star
star最高の一冊

Amazonで詳しく見る
by G-Toolsコリン・ウィルソンのすべて 下コリン・ウィルソンのすべて 下コリン・ウィルソン 中村 保男

河出書房新社  2005-10-20
売り上げランキング : 111623

おすすめ平均  star
star文章の一つ一つが躍動して面白く、内容は無上に為になる。

Amazonで詳しく見る
by G-Tools右脳の冒険―内宇宙への道右脳の冒険―内宇宙への道コリン・ウィルソン

平河出版社  1984-10
売り上げランキング : 271300

おすすめ平均  star
star内面的な成長へと
star潜在能力を開花させる極意がごく静かに語られる。
starコリンウィルソン自身の内宇宙

Amazonで詳しく見る
by G-Tools精神寄生体精神寄生体コリン ウィルソン Colin Wilson 小倉 多加志

学習研究社  2001-07
売り上げランキング : 257794

おすすめ平均  star
star人間の意志力の可能性
starNot His Best Yet...
star動機は卑しいけど出来は最高

Amazonで詳しく見る
by G-Tools精神寄生体精神寄生体コリン ウィルソン Colin Wilson 小倉 多加志

学習研究社  2001-07
売り上げランキング : 257794

おすすめ平均  star
star人間の意志力の可能性
starNot His Best Yet...
star動機は卑しいけど出来は最高

Amazonで詳しく見る
by G-Toolsコリン・ウィルソン音楽を語るコリン・ウィルソン音楽を語る河野 徹 コリン・ウィルソン

冨山房  1989-10
売り上げランキング : 1124013

おすすめ平均  star
star音楽の「功徳」についての解説書

Amazonで詳しく見る
by G-Tools時間の発見―その本質と大脳タイム・マシン時間の発見―その本質と大脳タイム・マシンコリン ウィルソン 竹内 均

三笠書房  1990-02
売り上げランキング : 795293


Amazonで詳しく見る
by G-Toolsずっと、人間のことばかり考えていた。―「アウトサイダー」から40年ずっと、人間のことばかり考えていた。―「アウトサイダー」から40年コリン ウィルソン Colin Wilson 小川 隆

アスペクト  1996-12
売り上げランキング : 728270

おすすめ平均  star
starコリン・ウィルソン斜め読み

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

Фアウトサイダーワークは、asrinflash do it!へ続く













posted by Mr.Rin at 08:33| ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | Vision | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。